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東京地方裁判所 昭和42年(借チ)1041号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕一 申立人は相手方所有の板橋区向原二丁目八番一九号宅地一、六七九・三三平方米(五〇八坪)の内一八六・九平方米(五六・五四坪)(本件借地という)の借地人であり、その地上に家屋番号二七八番の四木造瓦葺平家建居宅床面積一階七〇・七四平方米(二一・四坪)の建物(本件建物という)を所有し、ここに居住しているが、昭和四二年六月相手方が本件借地の南隣りの土地にあつた平家建居宅を買い取り、これを取り壊した上で、法令に違反して本件借地との境界線に殆んど接して高さ約五・四米の鉄骨造倉庫を建築したため、本件建物は日照をさえぎられるにいたつた。

そこで、本件建物のうち別紙図面(イ)の部分約一七・四平方米(五・三坪)を取り壊した上で、(ロ)の部分に木造瓦葺二階建一階二三・一三平方米、二階二四・七八平方米を増築することとし(本件増改築という)、相手方の承諾を求めたところ、承諾を拒まれたので、本件申立てに及ぶ。

二 本件資料によれば、右の事実のほか次の事実を認めることができる。

1 申立人は昭和二二年三月本件建物を前所有者岡田徹から買い受け、借地人の地位を承継し、昭和二七年二月借地権の譲渡につき相手方の承認を得、更に昭和三一年六月五日相手方との間で改めて借地期間を昭和五六年六月四日まで二五年間と定める借地契約をした。右契約においては、増改築について相手方の承諾を要する旨の特約が定められている。

2 本件建物は建築後約二七年を経過しているが、現状においては朽廃が問題となる程度にはいたつていない。

3 本件増改築によつて近隣に迷惑を与える点は認められないし、その他不当とする点は見あたらない。

以上の事実によれば、本件増改築は借地利用上相当として許可すべきである。

三 そこで、附随処分の要否を検討する。

1 鑑定委員会は、本件増改築によつて借地権の存続期間の延長もしくは買取価格の増加等相手方に不利益を与えることがあることを理由として、本件許可にあたり申立人に財産上の給付を命ずべきであるとし、本件借地の更地価格を三・三平方米あたり八万円、底地価格を同じく二万円と認めた上で、経済賃料の残存期間一三年分の六〇%にあたる金額を一時払いするのが相当であるとし、その金額について年一割二分の歩合による計算に基づく金二八万円(端数切捨)をもつて給付を命ずべき金額とする。なお、賃料については、右経済賃料の四〇%にあたる三・三平方米あたり月四三・三三円を近隣地代とを比較し修正した上で、四〇円をもつて相当としている。

2 当裁判所は、本件許可にあたつては、附随の処分をする必要がないものと認める。

1 本件増改築の規模は、現存建物の規模に比べ、必ずしも大きいものではなく、その増改築を計画するにいたつた事情、本件建物が専ら申立人の住居に使用されているものであること及び本件借地権の存続期間はなお一三年余を残していること等前示諸般の事情を考慮すれば、本件増改築は相手方に対して特段の不利益を与えるものとは解せられない。従つて、本裁判において申立人に対して金銭の給付を命ずる必要はないものと認める。

2 賃料については、本件資料によれば昭和三八年一月以来一ケ月金一、〇三五円(三・三平方米あたり一八円余)であり、申立人は相手方の増額要求を拒否し、現在供託中であることが認められる。しかし、右賃料をめぐる紡争は申立人との関係だけでなく、相手方から借地をしている他の者との間にも存することが推認されるので、本裁判において申立人との関係のみ切り離して解決するのは相当ではないと考える。(西村宏一)

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